エリクサー Phosphor Bronze NanoWeb レビュー
エリクサー歴約2年になりましたが、いい所も悪い所も色々と思うところがある弦です。
一般的にも好き嫌いが激しく分れる弦の一つですね。
実際この弦はその知名度とは裏腹に、ギターを選ぶとても難しい製品だと思います。
弦はプレイスタイルやギターによって大きく表情が変わりレビューがとても難しいので、これは自分の妄想として見てもらえると幸いです。
音の傾向としては、ウェットでモダンな音。
ビンテージっぽいドライな音とは真逆の位置にあります。
また高音域に特徴的なキラキラとした音があります。
この特有のキラキラがエリクサーサウンドの大きな要素の一つだと思います。
またコーティングによるコンプ感があるので音量はまとまりやすいです。
早弾きする時は重宝しますね。
しかし天井が低いので抑揚をつける演奏の場合はコツがいります。
プレイアビリティ的には弾き語りとの相性も良さそうですが、音響的には少し扱いずらいです。
というのも張りたてのエリクサーは高音域のピークが少し変わったところにあり、特に女性ボーカルとは周波数のおいしいところが被ります。
そしてエリクサーは倍音が大きくでます。
(弦自体の音量ではなく、基音に対する倍音の大きさという意味)
一般的な弦は基音がしっかりとあって、その周りにほんのりと倍音が漂っています。
しかしエリクサーは少し毛色が違い、倍音がしっかりと主張してきます。
コーティング弦という事もあり周波数レンジが広いわけでは無いですが、基音に対する倍音の音量が大きいので豪華な響きに聞こえますね。
しかし倍音が大きくでると、音の分離が悪くなる傾向があります。
例えば倍音が少ない楽器で代表的なのがリコーダー。
素朴で単調な響きなので、重奏になっても各パートの音程を聞き取りやすいですね。
逆にシンバルは倍音が非常に多く含まれていてゴージャスな響きです。
こちらは倍音の周波数分布が広く、また特定のピークを持たないので音程を聞き取るのは難しいですね。
少し極端な例でしたが、こういう意味ではエリクサーはシンバル寄りの音とも言えます。
豪華に聞こえる分基音は相対的に引っ込みやすく、従って音の分離感という点でもあまり良くはありません。
しかしこれは長所にも短所にもなるので、絶対的な善し悪しはないです。
また個人的な経験則ですが、エリクサーは素朴な音のギターに張った方がいい結果になりやすいです。
理由はギターの元々少ない倍音をエリクサーが補ってくれて、基音と倍音のバランスが整いやすいからです。
一方ゴージャスな響きのギターにエリクサーを張ると、元々大きい倍音がさらに誇張されてしまって、ガチャガチャと混雑した音になりがちです。
低音が出るギターでは音が曇って遠くなってしまう事もあります。
もちろんセッティングや弾き方、音楽ジャンルなど様々な要因で印象は変わってきます。
素朴な音のギターに張っても、エリクサーとのキャラクターが離れすぎていると違和感が生まれる場合もあります。
そして好みの問題がとても大きいので、一概には言えない難しいところでもありますね。
個人的には、張ってから2-3日後のある程度落ち着いてからの音が扱いやすくて好きです。
張ったばかりの音は高音がキンキンしていてどうも扱いが難しいです。
しかし弦が伸びきってしまうと音がパツパツになってくるので、自分はだいたい一週間くらいで張り替えています。
長寿命を謳っていますが、これは表面の錆耐性の事を指していて、弦の芯の寿命は普通の弦とさほど変わらないようです。
張ってから3~5日後がスイートスポットですね。
ベストな音質という意味では、寿命はさほど長くないです。
と言ってもノンコーディング弦は数時間で劣化し始めるものが殆どなので、比べるとかなり長いですが。
ちなみに弦が伸びきってしまっても、なんとなく新品ぽい音を保ってくれるのがエリクサーの凄いところでもあります。
そしてプレイアビリティですが、ここは意見が綺麗に分かれますね。
ヌルッとした感触なのでスライドはしやすい反面、指がピタッと止まってくれないので違和感を覚える人もいます。
またその滑りやすさからチョーキングもしにくいです。
プリングも少しコツがいりますね。
そしてテンションは少し固めです。
しかし一旦慣れてしまうとクセになり離れられなくなる魔力がある弦でもあります。
- まとめ
音のバランスで言えば、エリクサーはオールラウンダーではありませんね。
まさに人を選ぶ弦です。
しかしその独特の音に惹かれて使用してる人も多くいます。
プレイアビリティ重視の人も沢山いると思います。
また寿命の長さからサブギター等、たまに引っ張り出して弾くギターに張ってる人もいますね。
弦交換がめんどくさいだけの人もいるでしょう。
全部正しい使い方だと思います!
エリクサーの利点は音だけではないので、メリットデメリットや妥協点をしっかりと見極めて使っていきたいですね。
余談ですが、個人的に弦選びで重要視しているのがギターのキャラクターとのバランスです。
自分のギターがどんな特性を持っていて、長所短所はなんなのかを理解した上で、弦のキャラクターと照らし合わせる感じですね。
例えば自分のメイトンはカラッと素朴な音なので、少しウェット感を足すためにエリクサーやマーチンを使用しています。
逆にウェットな音のギターにエリクサーを張ったら、ジメジメとこもった音になる可能性が高いです。
この辺は料理と同じで、甘味や辛味、酸味や苦味、さらにエグ味など様々な要素がバランスよく組み合わさった時に美味しいものができますね。
素材の味を楽しむのも1つの正解ですが、現代的なアコースティックサウンドを目指すのであれば、この辺のバランス感覚が非常に重要だと考えています。
また歌モノとインストでは求められる音の傾向が違うので、ジャンルによって使い分けも重要です。
Twitterでは楽譜付きの演奏動画やフレーズ紹介、音楽理論の解説などしています!
フォローはこちらから→和水 真 (@123_4n) | Twitter