ハーモニクスでチューニングしてはダメ?って話

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チューニングをする際、ハーモニクスで音を合わせている人がたまにいますね。

 

5フレットと7フレットのハーモニクスでチューニングをするあれです。

 

ギターは色んなチューニングの方法がありますが、果たしてこれはどうなの?ってのが今回のテーマです。

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耳でチューニングを合わせるのってどうすればいいの?

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チューニングをする際「最後は耳で合わせろ!」って話をよく聞くと思いますが、具体的にはどうすればいいの?って話。

要するにチューナーで大まかに音を合わせて、最終的な微調整は己の耳でやれってことですね。

とは言ってもピッタリ合わせるのは難しいんじゃない?って方もいると思いますが、実は意外と簡単にできます。

てことで今回はその方法をご紹介!

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脳科学的に正しい練習方法のまとめ

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ソロギターと脳科学を始めて6年弱になりますが、実は科学的に効率の良い練習をしたらどれだけ伸びるのかってのが自分の裏テーマだったりします。

今回は科学的にも裏付けがあって、個人的にも成果が実感出来たものを紹介していきます。

 

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メジャーコードはなぜ明るいの?って話

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面白い論文を見つけたので紹介します。

 

A Psychophysical Explanation for Why Major Chords are “Bright” and Minor Chords are “Dark”

 

何故メジャーは明るくてマイナーは暗いのかってのを精神物理学者が説明していて、非常に興味深い内容になっています。

 

原文は英語なので、簡単にまとめてみました。

 

明るい、暗いって人それぞれ?

 

まず実験では

  • 楽経験の有無
  • 大人と子供
  • 国籍や文化

は関係あるのかって所を調べています。

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結果はご覧の通り。

楽経験の有無、国籍に関わらずメジャーは明るい、マイナーは暗いと評価しております。

 

さらに大人から4-5歳の子供まで評価は一貫していた模様。

つまり私たちは潜在的にメジャーは明るい、マイナーは暗いと感じるわけですね。

 

何故明るい、暗いがあるの?

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どうやら言葉や動物の鳴き声に深い関係があるようです。

基本的に動物が強さを表現する時は音程が下がり、弱さを表現する時は上がるようです。

※音量や元々のトーンではなく、語尾に向かってのピッチの上下

 

つまり強さを示す時は⤵︎、弱さを示す時は ⤴︎ といったイントネーションになるってことですね。

 

これがコードと何の関係があるのか、

ってことで次はディミニッシュとオーギュメントに注目しています。

というのもこの2つはインターバルが等しく重なっていて、さらにメジャー・マイナーどちらにも解決できるんですね。

 

簡単に言うと「話始め→話終わり」を、ハーモニーの「不安定→安定」に置き換えたわけです。

 

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結果はこんな感じ。

 

オーギュメントのどこかひとつの音を下げるとメジャーに、上げるとマイナーになりました。

つまり生き物の感情表現のパターンと見事に一致したわけです。

 

研究者はこれがメジャーは明るく、マイナーは暗く感じる理由では?と言っているわけですね。

 

 

音楽理論的には?

ここからは論文外の内容ですが、1つ説を紹介しておきます。

 

理論的には3度の音がメジャー・マイナーを決めると言われております。

  • Cメジャー =CEG
  • Cマイナー=CE♭G

といった具合ですね。

 

じゃあ何故これが明るく、もしくは暗く感じるのか?

 

これはC(ルート)とG(完全五度)の音の間隔が関係しています。

周波数的に、このふたつのちょうど真ん中の音はEとE♭の間なんですね。

そしてこの境界線から1つ高い音なら明るく、低い音なら暗くなる、といった感じ。

 

※ご指摘がありましたので、ちょっと加筆。

 

しかしこれは平均律でのネガティブハーモニーを元にした考え方で、純正律だとCとGの間の音はちょうどEなんですな。

純正律の時代からメジャー・マイナーの概念はあったはずなのでどうなんだろう?と言った感じ。

ちなみに純正律での周波数比率は

メジャー = 4:5:6

マイナー = 10:12:15

単純に比率が綺麗な方が明るく聴こえる?と思ったのですが、そしたらリディアンがイオニアンより明るい理由と矛盾するしねぇ、、、

 

もし知っている方がいれば、教えて下さい<(_ _)>

 

 

 

とにかく音楽理論的には説明が難しいものを、別の視点から見てみたってのは面白いんではないでしょうか?

 

確かに国籍や文化に関わらず、自信満々にスピーチする人は語尾に向かって音程が下がるし、質問する時なんかは上がりますもんね。

 

これがヒンドゥー教やアフリカの文化圏等、12音階を使わない人達が聴いたらどうなるのかってのは分かっていませんが、少なくとも我々はコードの性格を感じる能力が潜在的にあるってことでしょう。

 

さらに詳しく知りたい人は原文を読んでくださいませ。

 

それでは。

 

 

 

Reference

Norman D. Cook - A Psychophysical Explanation for Why Major Chords are “Bright” and Minor Chords are “Dark”

A=432Hzって結局どうなの?って話

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超マニアック、長文回。

調律の問題は紆余曲折して今があるのでどうしても短くまとめられませんでしたが、興味がある方は是非。

 

さて、A=432hzはDNA修復効果とか陰謀論、第3の目が開眼する(笑)など様々な説が飛び交っていますが、一体どうなんでしょう?

 

個人的な意見

 

結論から言うとA=432hzは特別でもなんでもありません。

 

そもそもA=440hzになったのは、歴史や数学、ボーカリストのピッチや地理的な問題など、様々な理由があります。

Jacob CollierのHideaway※1のように

最初はA=432hz、後半は440hzにして

相対的に華やかさを演出するという使い方はあるのですが、この人はちょっとハイレベル過ぎる。

したがって根本的なことを理解せずに432hzを使うのはオススメしません。

 

ということで、その理由なんかを書いていきます。

 

432は数学的にキレイ

 

432はハミング数※2と呼ばれる数字で、数学的には比較的キレイです。

 

音楽も物理的な現象なので数字が綺麗だと音も整う、と思いがちですが実はちょっと違います。

 

そもそもhz(ヘルツ)とは1秒間の振動数を表しています。

432hzなら432回/秒で空気が振動しているということですね。

 

じゃあ1秒の基準とはいったい何でしょう?

 

Wikipediaによると

秒は、セシウム 133 の原子の基底状態の二つの超微細構造準位の間の遷移に対応する放射の周期の9192631770倍の継続時間である.[9]

— 第13回国際度量衡総会決議1、1967/68年、Brochure sur le SI (8e édition)

 

つまりセシウムが電磁波を約91億回出したら1秒だよってことですね。

 

じゃあこの数字を432で割ってみると

9,192,631,770 ÷ 432 = 21,279,240.20833333

 

うーん、綺麗な数字とは言えませんね。

 

つまり432は数字単体としては綺麗だけど、ヘルツで考えると特別な数字ではなさそうです。

 

でもやっぱり数字がキレイだよ?

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↑こういうやつですね。

左が440、右が432です。

確かに432hzの方が綺麗に見えます。

 

しかしこれは440hzの方は平均律、432hzの方はピタゴラス音律が使われています。

現在広く使われている平均律ではどんなチューニングでも綺麗な数字にはならないんですね。※3

 

じゃあピタゴラス音律を使えばいいじゃない?という声も聞こえてきそうですが、そうもいきません。

 

というのもピタゴラス音律はその性質ゆえに、音が高くなるにつれてどんどんシャープしていくんですね。

そうなると音同士の比率がどんどん汚くなっていきます。

そもそも綺麗なハーモニーに必要なのは数字その物の美しさではなくて、それぞれの数字の比率の美しさなんですね。

現在ピタゴラス音律が使われていない理由もここにあります。

 

Jacob Collierが提唱しているスーパーウルトラハイパーメガメタリディアンスケール※4の考え方にピタゴラス音律を使うのはありかも知れませんが、これはDTMでしか実現できなさそう。

 

 

432hzは生命の周波数?

 

心臓の鼓動や脳波、地球の電磁波等は432hzと関係があると言ったものですね。

ググればたくさん情報が出てきますが、どうやらぴったり432になる物は皆無な模様。

 

というか心臓や脳波は状況によって大きく変動するし個人差も大きいので、432hzが良いという証拠にはならないでしょう。

 

変動しないと言われるシューマンレゾナンス(地球が出す電磁波)は7.83hz。

この数値で平均律を元にScientific Pitchを求めてもA=430.4hzなので、やはり432hzとは一致しませんね。

 

じゃあなんでA=440hzなの?

 

ということでチューニングの歴史を簡単に紹介します。

 

現在、国際基準になっているのがA=440hz、オーケストラ等は442hz、楽団によってはもっと高いピッチの所もあるようですね。

 

ただピッチに基準値ができたのは歴史的には最近のことで、昔は国や文化によってバラバラだったんですな。

 

まず1711年、John Shoreが最初のチューナーを開発。いわゆる音叉ですな。

この頃は大体A=400~420hzで設定されていたようです。

 

基本的にピッチは高いと華やかで豪華に聴こえます。

これに味を占めた世界中の楽団が、他のオーケストラより目立とうと基準値をあげていき、ピッチのインフレーションが起こります。

一時期、ロンドンのオーケストラはA=455hzで演奏していたこともあったそうな。

 

しかしここで問題が発生。

ピッチを上げるほどボーカルにハイトーンが求められるようになり、負担がかかっていったんですな。

 

楽器はチューニングでどうにでもなりますが、歌だけはどうしようもない。

これはどっかで歯止めを利かせないと、ということで1859年、フランスがA=435hzを基準に設定したわけです。

 

しかし当時のイタリア音楽にこの値は少し高すぎたみたいで、音楽家ヴェルディはA=432hzに、そしてイギリス音楽には低すぎるということでA=439hzにそれぞれ設定しました。

実はこれには気候的な問題が関係しています。

というのも基本的には気温が高いほど音も高く、気温が低いほど音も低くなるんですね。

あくまでフランスで聴くA=435hzに聴覚上の帳尻を合わせようとした結果そうなったわけです。

 

しかし当時のイギリスの研究者たちは439(素数)だと、計算がめんどくさいとクレーム。

じゃあ計算しやすい440で、ってことでようやくお馴染みの数字が出てきます。

 

1926年、政治的な繋がりもありイギリスがこの基準値をアメリカに持ち込むことになります。

そしてアメリカでA=440hz用に設計された楽器が世界中に輸出されることで、この値が国際的にメジャーになりました。

 

ようやく1955年、歴史的な背景も相まってA=440hzが国際基準として正式に決定したんですな。

 

まとめると、

最初は皆好き勝手やってたけど統一した方が楽じゃね?って流れからその基準値をどうするかでちょい揉め。

でも気候とかでピッチ変わっちゃうから考えても仕方が無いよね、ってことで当時マジョリティだった値が国際基準に。それが偶然440hzだっただけの話ですな。

 

じゃあ432hzってダメなの?

 

歴史的にも使われた時代があるくらいなので、ダメってことはありません。

むしろボーカリストは普段の歌が少し歌いやすくなるんではないでしょうか?

まあ好きなら使えばいいけどネットで言われているような効果は期待しない方がいいよってのが結論ですね。

 

ただデメリットが多いのは確かです。

例えば

  • A=440hzと比べて暗く聞こえるのでインパクトが薄れる。
  • 人によってはズレて聴こえる。
  • 気軽にセッションすることが出来ない。
  • A=440hzでよく響くように設計されている楽器は本領を発揮できない。

等でしょうか。

 

また440hz以上にするのも歴史を繰り返すことになるので考えものですね。

たまに遊びでチューニングを変えるのは良いですが、特別な理由がなければ440hzを基準に考えるのが現実的でしょうな。

そういった意味ではJacob Collierはピッチを上手く操っているので、彼の楽曲※5を分析してみるのも面白いですね。

 

最後に、A=432hzを否定している訳ではありません。

その音が好きならバンバン使えばいいと思います。

ただ結局気温によって音程は上下するので、盲信的に432hzを信じるのはどうかなと。

 

それでは。